平屋とは、住宅のうち1階建てで構成される建物を指します。上下移動を必要としないため、空間がシンプルに収まります。近年人気が高まりつつある平屋ですが、2階建てには無い特徴もあります。
この記事では、セルフビルドで平屋を建築した場合の作用を紹介します。
セルフビルドで建てる人も、工務店で建てる人も、2階建てと平屋のどちらが良いか迷ってるなら是非一読ください。家づくりの参考になれば幸いです。
記事の内容
- 平屋の特徴とメリット、デメリット。
- セルフビルドで平屋をおすすめする理由。
- 平屋は高い?コストダウンをするための方法。
平屋の特徴 メリットとデメリットは表裏一体
まずは平屋の一般的な特徴を把握しましょう。
どの部屋にいても自然を感じられるが、日照は課題。
平屋は、どの部屋にいても屋外へアクセスしやすくなります。2階建ての場合、通常は個室を2階に配置することが多いですが、各部屋から屋外へ出やすくなることによって、目覚めてすぐ寝室から外に出て外気を浴びたり、勉強や仕事のリフレッシュにデッキでコーヒーを飲んだりしやすくなります。
また家の中にいても、庭の木々や芝生がある庭の景観も楽しめます。2階にいると、身を乗り出さないと庭は見えませんし、土や草の匂いも届きにくいです。
ただ、平屋は平面が大きくなる分、高さが周りの構造物と比較して低くなりやすいので、日照や通風の確保が難しい面もあります。また、それらのデメリットを解消するには広い土地が必要になります。
家事が楽になるが、移動量は増える場合がある。
洗濯や掃除、片付けといった生活動線の移動が容易になります。家事を行う際も上下階で分断されないので、掃除機や洗濯物を持って階段を上がったりする必要がありません。
近年ロボット掃除機なども普及していますが、平屋は平面の面積が増えますので、一台のロボットで広い面積を効率よく掃除できます。
ですが、2階建てと比べ平屋は平面移動が増えるため、設計によっては導線が長くなってしまいます。無駄に長い廊下ができたり、各部屋のアクセスが遠くなってしまいやすくなるので、セルフビルドで計画する際は、プランニングの中で生活動線を明確にゾーニングする必要があります。
例えば、『夜トイレに起きたとき、寝室の反対にトイレがあると億劫なので、寝室とトイレは近くに…。』といった具合に位置関係を整えて間取りを考えましょう。
家族のコミュニケーションが容易になるが、音は伝わりやすい。
ワンフロア構造の平屋は、自然と居室に人が集まりやすくなります。2階に子供部屋や書斎があると、帰ってすぐ自室に篭りがちになり、コミュニケーションの時間が少なくなる可能性がありますが、平屋は家族の息遣いを感じやすく、部屋を訪れるのも容易なので、自然に接する時間を設け易くあります。
ただ、家族の存在を感じられるというのは、上下階間と比べて音が伝わりやすいからです。リビングで映画を見ている時に、自室で勉強をしている子どもに音が伝わってしまったりするので、プライバシーの配慮は必要です。
平屋とセルフビルドは好相性です。その作用とは。
セルフビルドで家を新築する際、いくつかポイントがあります。基本は素人が一人で家を建てる行為をセルフビルドと呼びますから、自分で家を考えるうえで、以下の要点を留意する必要があります。
- 施工の容易さ。
- 安全性の担保ができる。
- コストと施工不良リスクを極力抑える。
- 長期の工事になっても対応できる。
- メンテナンスしやすくする。
- 設計しやすいプランを考える。
これらの要点を叶えやすくなるのが平屋です。ではなぜ平屋はセルフビルドと相性がいいのでしょうか。平屋の構造にその理由が隠されています。
2階建てより簡単に建てられ、メンテナンスもしやすい。
2階建てを建築する場合、屋根や2階にアクセスするために、足場を家の周囲に建てる必要があります。平屋の場合もプロの現場では足場を立てますが、ウマや脚立をうまく使いつつ、屋根勾配を抑えれば足場を用いなくとも家を完成させることができます。
セルフビルドは、自分の作業量に応じて工事が進んできますから、事情により工期が長期化する可能性があります。流石に自分で足場を買うことは現実的でないので、足場を使うならレンタルすることになりますが、不意に工期が伸びると想定しなかったコストが発生したり、足場レンタル会社と調整が必要になる可能性があります。
また、足場を要しない家であれば、住んだ後も安全にメンテナンスを行えます。セルフビルドをするような人は、きっと完成した後もちょこちょこ手直ししたり、手を加えたりするでしょうから、できるだけ低い建物の方が良いのは明白です。
また、給排水管の2階への立ち上げがなければ、壁内を通る配管がなくて済むため、リスクのある難しい作業を省けますし、配管詰まりや老朽を原因とする水漏れがあった場合に点検や修繕を行いやすいです。
2階がないため、屋根形状をうまく活用できる。
ワンフロア構造であれば、意匠に拘らない限り天井の施工を簡略化できます。2階建ての場合、1階の天井は2階の床梁に石膏ボードをベタベタ張っているわけではなく、天井の下地を作ってから、石膏ボードを貼ります。
上を向いた作業というのは体勢も辛いですし、ボードの粉塵が降ってきたりし、非常に作業がしにくい工程になります。別の記事で紹介したセルフビルドの体験記等でも、天井の施工に関する苦労話は度々取り上げられており、素人にとって如何に大変か推察できます。
平屋であれば、上を見上げると屋根ですので、勾配面の材である垂木に、直接石膏ボードを施工することもできます。また、真上を向いた作業が少なくなり、いくらか楽できます。
構造はシンプルで良く、過剰な耐震構造は必要ない。
家が地震で揺れたり、地盤沈下を起こす度合いは、建物の高さと面積あたりの重量が関わってきます。シャンパングラスとコーヒーカップをトレーで運んだ際、コーヒーカップに比べてシャンパングラスの方が転びやすいことが想像できますが、家でも同様のことが言えます。重心が高く、面積あたりの荷重が大きい家の方が、地震でより揺れ易く、沈みやすいのです。*地震では家の頂点が地面から離れるほど大きく揺れます。
家づくりにおいては、どこの工務店でも耐震性へのこだわりをPRしますが、平屋の場合はそこまで神経質になる必要はありません。現代の建築基準に準えて家を建てればまず問題ないでしょう。
家には、耐力壁と呼ばれる柱の揺れを抑えるための壁面を作ります。方法はいくつかありますが、斜めに柱を入れる一般的な筋交より、ダイライトなどの耐力パネルの方が耐震性は高いです。しかし、耐力パネルは施工をする上での納まりが難しくあり、工業製品であるが故、コストが筋交より高くなります。
階段が必要ないので、設計し易く階段施工の手間を省ける。
平屋であれば2階に上がるための階段が必要ありません。階段をプランニングに取り入れると、どれくらいのスペースを階段に割けばいいか、素人には検討が難しく、プランニングの段階で立体的なイメージ力を要することになります。また、施工時も特有の加工や手法を要するため、安全性を備えた階段を作るためには、専門書での勉強が必要です。
階段を作らなくて済むということは、階段の分スペースを有効的に活用できますし、コストの削減につながります。
これからセルフビルドをするなら平屋がベターです。
はじめに説明した平屋のデメリットは、どれもプランニングの問題です。幸いにしてセルフビルドを考えているということは、これから家を手にするということなので、しっかりとデメリットを踏まえた上で計画を立てれば、デメリットも解消されます。
建築予定地が既に決まっており、平屋で建築することが難しい場合は仕方ありませんので、2階建てで考えるようですが、土地の購入から始めるのであれば、平屋を建てても問題のない土地に条件を絞って探せば良いでしょう。
よく、平屋はコストが大きくなるなんて言われますが、それもプランニング次第です。平屋は2階建てと比べて、確かに屋根と基礎が二倍になりますが、建築に足場は必要なくなり、トイレは1つで済みますし、階段も無いため、うまくすればなんやかんや安く収まると思います。
基礎はコストダウンが難しいですが、屋根は勾配を浅くし、かつ板金屋根など単価の安い屋根材を採用すれば、平屋でもコストアップを防げます。予算なりの大きさの家を計画するのは、平屋でも2階建ててでも変わりませんが、採用する工法や工夫次第で、よりお得なセルフビルドにつながります。
平屋と2階建てではそもそも条件が違いますので、コストパフォーマンスの差はひとまず心配せずに、住み良い平屋で理想のセルフビルドを叶えられたら良いですね。