セルフビルドで自分の家を建てる機会は、おそらく一生に一度しか持てないでしょう。やってみないことにはセルフビルドがどんなものかイメージしにくいですが、実際に苦労や工夫を重ねながら立派に家を作った人たちがいます。
その人たちが綴った本がいくつかありますので、レビューを含み紹介します。
今回は僕がセルフビルドに興味を持つきっかけとなった、セルフビルダーたちの体験を描いた書籍を紹介します。
セルフビルドに興味を持ったものの、どこから手をつけたら良いかわからない人は、まずこれらの本を読んで雰囲気を掴みましょう。きっと読めばセルフビルドに意欲的になれます!
本記事の内容
- セルフビルダーたちの書籍を紹介。
- それぞれの本の内容。
- 知りたい情報別の評価。レビュー。
セルフビルダーたちの書籍おすすめ4選
自分でわが家を作る本。 著者:氏家 誠悟 氏
2階建ての家を建てるまでの実践を記録した、セルフビルドのガイドブックです。
僕がセルフビルドに興味を持ち、建築書籍を読むようになって一番最初にヒットした本です。体験記が中心ですが、施工の工夫なども紹介されており、素人と同じ目線で説明されているため、初学でも現場のイメージが掴みやすい内容です。
著者の家は10年という大期間を費やし完成させており、サッシや水回り設備以外は、ほぼ自身の手で作り上げています。セルフビルドとはなんぞ?を一冊で理解できる本で、僕にとってもバイブルになっています。この本は表紙が擦り切れるくらい読んでいます。
建築の知識がない人でも、セルフビルドの願望があれば読了後、きっとその気になっていると思います。
350万円で自分の家をつくる 著者:畠山 サトル 氏
「350万円と6カ月の時間があれば、家は自分で建てられます」をコンセプトに、著者が自分で建てた家を実例を紹介しています。工期が6ヶ月と決まっており、『◯ヶ月目にどの作業をしている』といった構成になっているため、実際の進み具合や工程が理解しやすい内容です。
この本の実例となった家も、“一人で建てられる家”にこだわっており、プロでなくても真似をしやすい設計・施工で作られています。タイトルにも記載されている通り、350万円の家なので無駄を省いたシンプルでコンパクトな家ですが、家の機能はしっかりと果たしており、また、住まいの環境デザイン・アワード2012の住空間デザイン最優秀賞を受賞するほど、デザイン性に優れた家を作り上げました。
セルフビルドで建てた自分の家を空想するようになったはじめの頃は、素材にこだわって立派な家を作りたいと思っていましたが、素材にこだわってコストをかけること=いい家を建てる条件ではないことに気付かせてくれました。
イラストやカラー写真が豊富でとても分かりやすく、この本を読むと簡単に家を作れそうな気がしてきます。
家をセルフでビルドしたい 大工経験ゼロの俺が3LDK夢のマイホームを6年かけて建てた話 著者:阪口 克 氏
自分の手で自分の家を建てることに「男のロマン」を見出し、ひたすらに苦労を重ねながら家を完成させた体験記です。この本に施工のノウハウは記載されていませんが、家作りで直面する困難を赤裸々に取り上げているため、焦りや不安につい共感し、自分が実際にセルフビルドをしているような没入感があります。
セルフビルドで思いつく限りの失敗や苦労を著者が身をもって体験し、その対策までも話が及ぶので、読者も家を建てる時には、『ここはあの本でも苦労していたなあ』と予防線を張れるかもしれません。
色々な失敗を重ねながら少しづつ家づくりを進めていき、最後には立派な家を完成させているので、著者が家を完成させた際の言い表しにくい達成感や感慨深さをリアルに味わうことができます。
自作の小屋で暮らそう Bライフの愉しみ 著者:高村 友也 氏
お金や時間に縛られないシンプルライフを実現するために、10万円で小屋を作ってベーシックに暮らすまでの試行錯誤の記録。雑木林に土地を買い、手工具で小屋を建て、水や電気、トイレ等の生活設備を整えるような小屋暮らしブームの先駆けとなった本です。
宅地に住むこととは違い、生活インフラが整っていな場所での暮らしになるので、お金を使わず、少しサバイバルじみた生き方を綴っています。
生活に係るコストを極力少なくするという内容は、セルフビルドでも目的が重なる部分があります。本書では、ソロー『森の生活』のような、生きることに対する哲学を含む内容ですが、俗世から一歩引いてシンプルに生きたい人にはぜひ読んで欲しい内容です。
このブログは普通に暮らすための家を作ることがテーマなので、内容がズレますが、面白いのでぜひ一読いただきたいです。
どんな目的で読むのがおすすめ?知りたい情報別評価
セルフビルドの本を読むにも目的があるかと思いますので、どんな情報が知れるか、いくつかの評価項目に分けてみました。
評価項目について
評価項目は以下の4点とし、星5中の評価を設定します。
- 分かりやすさ・・・初学でも内容が理解しやすいか
- 実用度 ・・・施工手順がしっかりと記載され、実用的であるか
- 面白さ ・・・セルフビルドの世界に引き込まれるような内容であるか
- リアルさ ・・・セルフビルドを肌で感じやすいか
自分でわが家を作る本。
分かりやすさ: | (4.5 / 5) |
実用度: | (3.0 / 5) |
面白さ: | (4.0 / 5) |
リアルさ: | (4.0 / 5) |
Average: | (3.9 / 5) |
建築に興味を持った人にぜひお勧めしたい本です。初学でも理解しやすい施工手順と、体験を交えたコラムが交互に書かれており、セルフビルドに対する熱意が伝わってきます。
この本で家づくりの流れを理解することは容易ですが、建築時期が1994年〜2004年と少し昔なので、建築法規やデザイン感が現在と違うため、実用として参考にするには少し工夫が必要です。
350万円で自分の家をつくる
分かりやすさ: | (4.0 / 5) |
実用度: | (5.0 / 5) |
面白さ: | (3.0 / 5) |
リアルさ: | (2.5 / 5) |
Average: | (3.6 / 5) |
コンセプトが明確であり、参考にできる部分が非常に多く、セルフビルドに本気になったら必読すべき本です。
セルフビルドをするうえでの工夫やスケジュール感を覚えられるので、参考として実用できます。また、性能や素材の良さに頼らない家づくりは、著者のこだわりを感じます。
家をセルフでビルドしたい 大工経験ゼロの俺が3LDK夢のマイホームを6年かけて建てた話
分かりやすさ: | (3.0 / 5) |
実用度: | (1.0 / 5) |
面白さ: | (5.0 / 5) |
リアルさ: | (5.0 / 5) |
Average: | (3.5 / 5) |
家の作り方やノウハウは書かれていないので実用向きではありませんが、体験談はのめり込める面白さがあり、現場のリアルさも伝わってきます。
自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ
分かりやすさ: | (4.0 / 5) |
実用度: | (2.0 / 5) |
面白さ: | (5.0 / 5) |
リアルさ: | (2.5 / 5) |
Average: | (3.4 / 5) |
著者のライフスタイルが特殊なため、実用的でなくリアルさもありませんが、とても面白い本です。少欲知足を体現している点が尊敬できます。
セルフビルド書籍の総評
セルフビルドは本質として、素人が家を建てる行為を指します。そのためセルフビルドに関する書籍は、素人でも平易に理解できる内容で書かれています。
今回紹介した書籍で読む順は特にありませんが、セルフビルドとは何ぞ?の段階であれば、『自分でわが家を作る本。』『家をセルフでビルドしたい 大工経験ゼロの俺が3LDK夢のマイホームを6年かけて建てた話』を、より実務的な内容を知りたいのであれば、『350万円で自分の家をつくる』から読むといいと思います。
『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ』は実用でありませんが、文庫で安いですし、面白いので、併せて買っていただくことをお勧めします。