家の寸法ルール

コラム

家を設計する際には、基準となる寸法があります。建築用方眼紙の1マスを『1P』と建築業界では言ったりしますが、その『1P』のピッチの単位をモジュールと呼びます。

では、そのモジュールにはどのような種類があるでしょうか。

モジュールとは

モジュールとは、建築で設計上の基準となる単位寸法。日本建築の「尺(しゃく)」や「間(けん)」もモジュールの1つ。日本では、従来、住宅を建てるときのモジュールを3尺×6尺(910mm×1820mm)としており、住宅建材についても、多くの商品で尺モジュールがベースになっているため、現時点では、この尺モジュールでつくられた建築物が多数存在する。ただ、この尺モジュールを当てはめると、廊下が狭くなって車椅子が通れないなどの問題が生じるため、近年、ハウスメーカーなどを中心に「1m」を基準とする「メーターモジュール」を用いることが多くなっている。なお、北米などでは、よりワイドな4フィート×8フィート(約1220mm×約2440mm)を基準とする「フィート・インチモジュール」が用いられており、日本においても、輸入住宅を手掛けるメーカーなどで採用されている。

SUUMO(スーモ)住宅用語大辞典

日本の建築では尺や間を用いた尺貫法がポピュラーですが、尺貫法とはどのようなものでしょうか。

尺貫法とは

尺貫法とは、長さ・面積などの単位系のひとつ。 長さの単位を「尺」、質量の単位を「貫」、体積の単位を「升」とする日本古来の度量衡法。

メートル条約加入後、1891年(明治24)メートル法を基準として、尺・坪(面積の単位)・升・貫を定義し、1958年(昭和33)までメートル法と併用されていた。

土地・建物に関する計量については、1966年(昭和41年)3月31日までは尺貫法による計量単位を用いてさしつかえないことになっていたが、それ以後は、すべてm2による計量単位を用いなければならなくなった。

一般的に用いられる長さ寸法は

 1間・・・・1820mm

 1尺・・・・303mm ※3尺は910mm

 1寸・・・・30.3mm などとなる。

SUUMO(スーモ)住宅用語大辞典

ホームセンターや町の材木店で取り扱っている木材のうち、ほとんどが尺貫法と呼ばれるモジュール寸法で用意されています。木造軸組工法ではこの“尺モジュール”で設計するため、日本で一番多い流通材で建てられるメリットはとても多いです。尺や間などの単位は馴染みが薄いかもしれませんが、馴染みのメートル法に換算すると1尺303mmで1間1818mmですが、そのままだとキリが悪いので、実際には3尺910mm、1間1820mmに切り上げて設計されます。6尺=1間とまあややこしいですが、3尺X6尺の板を“サブロク板”なんて呼び、それは馴染みのある畳1枚とほぼ同じです。畳を入れる場合も、メーターモジュールではそれ専用の畳を購入する必要があります。

尺モジュールは狭いのか

こざかな
こざかな

尺モジュールで設計された家は、実際暮らすうえで狭くて不便なのでしょうか。

–––日本には古来よりこんな言葉があります。

立って半畳、寝て一畳。天下とっても二合半(四畳半)

鴨長明 方丈記

鴨長明の方丈記は、4畳半程度の庵で寝起きした随筆ですが、その中に、立つには半畳、寝るには一畳あれば十分だという意味です。

さかな
さかな

質素な生活を生涯を通して貫いた、鴨長明らしい言葉です。

実際日本での寸、尺や欧米でのインチ、フィートなどは人体の寸法が基準となっています。例えば寸とインチの単位はどちらも親指の幅がルーツになっています。尺は親指と人差し指を広げた幅、フィートは足の幅になります。

ぺんぎん
ぺんぎん

寸法を決める時、昔の人は体を使っていたんですね。

住宅においては尺貫法の場合、910mmピッチで設計する場合が多く、トイレや廊下が狭くなると言われることがありますが、広さが欲しいところでは303mmピッチで広げることもできます。逆の見方をすれば、面積が広くなる=建築費アップですから、必要最低限の広さは特に計らずとも確保できると考えれば、余計なコストアップを防げると考えるべきです。メーターモジュールでは廊下の幅が壁の中心線間で1000mmになります。尺モジュールでは910mmです。どちらでも人が通るには十分な広さです。

建築においては寸法の区切りとなる位置が柱の中心線なので、設計上910mmの幅でも、両壁の中心線からの厚み(3.5寸角の柱とした場合、130mm前後)を差し引いて、780mmの内法になります。車椅子の幅は電動で700mmくらいのため、トイレの向きなどは工夫を要しますが、通行する分には問題ありません。介助を前提とする場合などは、910mmの半分の455mmを加えることで、1365mmの幅にできます。壁面間の内法で1235mm確保されます。

ぺんぎん
ぺんぎん

ちなみに、馴染みのメートル法の由来は地球の北極から赤道まで(地球の1/4)の1千万分の1を1メートルとしてますので、長さの間隔は掴みやすいですが、人体基準とした場合キリが悪いのはメートルの方だといえます。

わに
わに

無駄を省くために、ぜひ鴨長明の賢しい言葉に倣って家づくりを検討しましょう。

家具の配置について

尺貫法を用いた場合、一点だけ注意が必要なことがあります。

近年IKEAやコストコなど、品質が高くてローコストな輸入家具を購入する選択肢が増えました。特にソファやテーブルなどは、海外の家に合わせているため、ビッグサイズに設計されている場合があります。

デザインも良く、手頃なため良い選択肢ではあると思いますが、購入したら扉や通路に干渉しかねない場合があるので、もし購入したいソファなどあれば、事前に設計に組み込んでプランニングしたほうが良いかと思います。

前述の通り、尺貫法でも細かくピッチを広げられるので、せっかく家を建てるのであれば、設計する際には家具の納まりも検討してみてください。

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